フュンフバイン(関西フットサルリーグ)の監督をしている頃は、年末からお正月にかけてのこの時期が、とても嫌いだった。
全国各地で行われているリーグ戦が佳境に入り、ほぼ順位が決まってくると、選手は来シーズンのことを考え始める。
「お前、来季どうすんの?」
「うちに来いよ。」
シーズン終盤に差し掛かると、選手同士あるいは関係者と選手の間で、腹の探り合いが始まる。移籍シーズンの始まりだ。
振るわない成績、降格や入れ替え戦が待っているチームの選手などは特に、苦々しい時期を過ごしている。
自分のチームが悪い成績、誘ってくれるチームは良い成績。新鮮な刺激も欲しくなる。
人数の集まらない雰囲気の悪いチーム練習に、渋々通う必要がないオフシーズンを楽しんでいる選手も、この時期になると多い。
クリスマスに忘年会。浮わついた年末年始のこの時期に、「蹴り納め」、「初蹴り」という名のフワフワしたワンデーのイベントが開催されるのだ。
選手たちは所属チームに関係なく、友達同士、仲の良い者同士が誘いあってイベントに参加する。顔や名前は前から知っていたけど、一緒に蹴るのは初めて、喋るのは初めてという相手も、寄せ集めの即席チームにいたりして、仲良くなる。
できればシーズンオフは3月まで引き伸ばしたい、それが監督の本音。
地域リーグのチームはできることならば、地域チャンピオンズリーグや全日本フットサル選手権への出場権を確保しておきたい。年末年始のこの時期を、眼前に確固たる目標を持った状況で乗り切ってほしいからだ。(来季のこと、移籍のことなんか、シーズンが終わってもいないのに考えられるか!)という思考でこの時期に突入するのが、監督にとっては助かるのだ。
都道府県リーグなら、来シーズンには昇格するとか入れ替え戦があるとかなら、チームを辞めるという考えも浮かびにくいものだ。
僕は、選手獲得に関しては奥手なほうだった。僕がフュンフの監督をしている頃は、自チームの選手から「キムさんも、もっと欲しい選手に声かけてくれよ」と叱られるくらい、他のチームの選手に声をかけるのが苦手だった。
去る者は追わず、来るものは拒まないというスタンス。チームとしては、一時的に損をすることのほうが多い。しかし、選手は自分自身がやりたいチームでプレーするべきだという信念があった。人に言われてプレーするチームを決めるようなものではないはずだ。実際、人から頼まれて入って来た選手は、助っ人感がいつまでたっても抜けない。助っ人感が抜けないから、成績が振るわなければいずれ居なくなる。だいたいそういうものだ。
移籍を考える明確な理由があるか。
そもそも移籍を考えるに値する事情、チームに対する不満などがあるかどうかが、大事である。
具体的には、以下のような理由があるかどうかを自問してもらいたい。
- 物理的な障壁がある(人事移動などで練習に通えないなど)
- チームのレベルやノリが自分には合わない(物足らない)
- チームのレベルが高すぎて自分がついていけない(チームには不満はない)
- 自分の求めるプレーをさせてくれない(ポジション的、役割的な部分)
- 出場時間に不満がある(もっと出たい/もっと休みたい)
- 待遇や環境に不満がある(スポンサーや部費、練習場やウェア支給など)
- 嫌いな奴がいる
以下は上記それぞれに対する僕の率直な意見だ。
- 物理的に無理ならば仕方がない。移動先で同等以上のチームを探そう。
- レベルが物足らない場合は移籍すべきだと思う。(自分がまだ若いと思うなら尚更。)チーム全体のベクトルを大幅に変えるのは難しく、とても時間がかかる。今すぐに上のカテゴリのチームに移籍を。Fリーグへの挑戦をお勧めしたい。
- もっと向上心を持つべきだ。入団時の志を忘れてはならない。やっぱり無理だと思っている選手は、どこへ行っても無理。
- 4と5は、ストレスに感じているなら監督やキャプテンなどと正直に話をするべき。変えることはできるはずだ。それでも我慢できないと感じたら、移籍すればよい。
- 4に同じ。
- フットサルではないスポーツをお勧めしたい。10年後に戻ってくれば、多少は変化があるかも。アマチュアが待遇で行く先を決めると、先々で後悔することが多いと思う。
- 大嫌いな奴、その本人と腹を割って話をするべき。話もしたくない場合は正直言って難しい。許しがたいことがあるとか、生理的に受け付けないとか。無理を承知で言うが、彼を許してみてほしい。あなたの懐の深さ、器の大きさを試されている。あなたは必ず、人間的に大きく成長することができるはずだ。
最後に。
今のチームにどんな不満や問題があったとしても、素直に自分自身の気持ちに向き合ってチームを決めることが大切だと思う。
限りあるあなたの時間を、どのチームで、誰と共有するか決めるいうことは、あなたにとって本当に大事な意味を持つことだ。
ただし、これだけは言える。
隣の芝が青く見えるのは、職場でもフットサルでも同じだ。
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